プロジェクト管理の属人性の排除と「品質の見える化」

『自動車業界に見る組込み分野でのプロジェクト管理の勘所』(NE 2005.6.20)

記事概略

組込み業界の多くは、市場からの要請や競合他社との競争から、多機能・大規模化が進んでおり、開発規模も増加の一途をたどっている。これに合わせて、従来は数名程度の技術者で開発していたものが、数十名〜数百名といった規模の人員でないと開発できない状況になってきている。
これに対して、プロジェクト管理は旧来の数名で開発していた頃のプロジェクトマネージャのスキルに依存した、属人性の高い、アドホックなままであり、プロジェクトの進捗管理が困難であるばかりか、品質については管理不能な状況に陥っている。

この記事では、属人的なプロジェクト管理から、きちんとプロセス化したプロジェクト管理へ移行することで、プロジェクトの「品質の見える化」を行なう重要性を訴えている。この中で、著者の会社で推進している「品質会計」という品質管理の仕組みや多数の管理が統合され相互連携できるプロジェクト管理ツールの紹介を行なっている。

特に「品質の見える化」については、ソフトウェアの品質を会計(あるいは簿記)になぞらえて、バグを負債と捉えて帳簿を記入する仕組みだ。上流工程にこれを適用することで、レビューの信頼性を測ることができ、第3者からも信頼性確保の状況が「見える」ようになる。また、「負債を明確にし、すべて返済する」という明確な目標を設定できるため、これを徹底することにより、品質の向上だけでなく、技術者の品質意識を高揚させる(モチベーション向上)ことができるそうだ。

所感

さまざまな課題管理やレポート機能が統合されたプロジェクト管理ツールは必要だし重要だがこれはどうでも良い。
プロジェクト管理を属人性の高いままにしてはいけない、ということに過ぎない。もちろん、ツールが良ければ無駄な管理工数を削減できるので、メリットは少なくない。
しかし、この記事での注目ポイントは「品質の見える化」である(私の独断と偏見による)。
これは、自動車業界だけでなく、もちろん組み込み業界だけでなく、すべてのソフトウェア開発(特に中規模以上)に適用できる、「品質の見える化」だと感じた。さまざまなプロジェクトにおける品質管理で適用すべきだと思う。