どちらのUML認定試験を受けるべきか

現在、UML(Unified Modeling Language)に関連する技術者認定試験は、下記に挙げる、UMLモデリング技能試験(UMTP試験)、OMG認定UML技術技術者資格試験(OCUP試験)の2通りが存在する。この日記はあくまで個人的な意見として「どっちの試験を受けたらいいの?」に答えるためのもの。

それぞれの特徴は以下の通り。

  • UMLモデリング技能試験(UMTP試験)
  • OMG認定UML技術者資格試験プログラム(OCUP試験)
    • 認定機関:UTI
    • UMLの仕様を制定するOMGが認定する唯一の公式資格
    • UMLの知識(概念と利用方法)に関するテスト。最上位はメタモデルが対象(CASEツール開発者向き?)
    • レベルはファンダメンタル、インターメディエイト、アドバンスト

いずれの試験も、エントリーレベル*1についてはUMLの基本的な知識を問うものになっており、ほとんど差はないと考えてよい。
上級レベルになると目的の違いが表面化して、試験内容にも違いが出てくる。UMTPがソフトウェア開発の現場(実務)で使えるモデリングスキルの認定であるのに対して、OCUPがメタモデルを含んだ形の厳密なUML仕様の知識・スキルの認定という点が大きな違いであろう。

どっちを受験すべきか

エントリーレベルは受験しやすい方を選べば良いと思う。モチベーションが高いなら両方に挑戦するのがお勧め。
上級レベルに関しては、実務でモデリングすることが中心であればUMTP試験を、メタモデルをはじめとして厳密な仕様を理解する必要のあるCASEツール開発者などはOCUP試験を受験するのが良いだろう。

お勧めの試験 どんな人
UMTP試験 現場でモデリングを実施する人・見る人 ・実務(ソフトウェア開発の現場)でUMLを使ったモデリングを行うエンジニア

・実務でUMLモデルを参照あるいはレビューするエンジニア

OCUP試験 厳密な仕様の理解が必要な人 ・CASEツール開発者

モデル駆動開発などでソースコード生成規則などを検討・実現するアーキテクト

各試験の詳細

以下に、UMLモデリング技能試験(UMTP)とOMG認定UML技術者資格試験プログラム(OCUP)それぞれの詳細をメモしておく。

UMLモデリング技能試験(UMTP/Japan)

UMLモデリング推進協議会(UMTP/Japan)が行っている"UMLを使ったモデリングスキル"を認定する認定試験である。より上位になるほど、実務において高品質なモデルを作成できる能力が問われる。

■ UMTPスキル/知識体系*2

難易度 レベル名 認定スキル(=モデリングスキル) 説明
L1 簡単なUMLモデルの意味が分かる UMLなどを使ってモデリングを行う最低限の知識を持っている
L2 UMLモデルの読み書きが普通にできる(モデリングリテラシーがある ・開発範囲の一部を担当し、モデリングができる

・他者のモデルの意味を理解できる

L3 実務でモデリングが実践できる ・拡張性や変更容易性の点で高品質なモデルを定義できる

・ビジネスモデリング、分析、アーキテクチャ設計、組み込み開発を行うための専門的な知識を備えている(分野は選択)

L4 実践に基づいてモデリングを指導できる ・L3のスキルを有し、開発プロジェクトでモデリングを一定数あるいは期間実践した経験を持つ

OMG認定UML技術者資格試験プログラムOCUP(OMG-Certified UML Professional Program)

UTI(UML教育研究所)によれば、OCUPは「汎用モデリング言語の世界標準であるUMLの概念と利用方法に関する知識を統一された基準で認定する目的で、標準化団体であるOMGによって制定」されたものである。
UMLの仕様策定を行っているOMG(Objecect Management Group)による認定試験である。

難易度 レベル名 認定スキル(=UMLの知識) 説明(主な出題範囲)
ファンダメンタル UMLで使われる用語や基本的なダイアグラムに関する知識、モデルの意味を理解する能力を認定

クラス図、アクティビティ図、シーケンス図、ユースケース図に関する基本的な知識(新仕様UML2.0に関する部分はごくわずか)【出題:UMLの一部】

インターメディエイト ファンダメンタルと同様、UMLの用語、ダイアグラムに関する知識、モデルの意味を理解する能力 複合構造図、コンポーネント図、シーケンス図、ステートマシン図など【出題:UML全般】
アドバンスト 主にメタモデルを中心としたUML全般にわたる知識、理解能力を認定 (主な出題範囲)クラス図、複合構造図、アクティビティ図、ステートマシン図などのダイアグラムに加え、OCL(オブジェクト制約言語)。UMLモデルの変換といった応用的な利用方法をとる開発者、ツール開発者、アーキテクトに求められる、高度な内容

*1:エントリーレベルの試験は、UMTPでは「L1」、OCUPでは「ファンダメンタル」である

*2:http://www.umtp-japan.org/modules/examination3/を引用し、修正